【乳酸菌】乳酸菌市場8,000億円規模に到達-熾烈な競争で差別化戦略進む-

【乳酸菌】乳酸菌市場8,000億円規模に到達-熾烈な競争で差別化戦略進む-

腸内フローラ”への関心の高さから火が付いた乳酸菌ブーム。
調査会社のレポートでは関連マーケットは8,000億円規模に膨れあがるなど、巨大市場に成長した。
これまで、便通改善作用一辺倒だった有用菌類の機能性は、幅広い研究の推進や消費者のリテラシーの向上により過去のものになりつつある。
特に機能性表示食品の登場は市場拡大に一役買っており、訴求したいテーマをより具体的に表現できるようになったことが大きい。現在受理されている訴求テーマで、整腸作用以外の表示では「体脂肪低減」「内臓脂肪低減」「ストレスの緩和」「睡眠の質向上」「肌の潤い維持」「目・鼻の不快軽減」など多岐にわたり、今後もさらに広がりそうだ。
現在では乳酸菌やビフィズス菌、菌類が代謝する乳酸菌生産物質は、あらゆる疾患の予防に有効な健康長寿素材として確実に市民権を得ているといっていい。


“腸内フローラ”への関心や、“機能性ヨーグルト”、“機能性表示食品”の登場によって急成長した乳酸菌市場。
乳酸菌やビフィズス菌が持つ幅広い機能性が消費者に支持され、右肩上がりで拡大を続けている。
調査会社TPCマーケティング社によると、関連市場は2018年度で8,414億円、2019年の見込みでは8,639億円になると発表した(右グラフ)。また、乳酸菌関連商品のカテゴリー別シェア(2018年)では、トップがヨーグルトの62.7%(5,273億円)、次いで乳酸菌飲料の26.8%(2,258億円)となり、これら2 カテゴリーで乳酸菌関連商品市場全体の約9 割を占めているという。
健康食品は4.3%(同363億円)、食品が1.9%(同160億円)となっている格好だ(下グラフ)

TPCマーケティングリサーチ(株)調べ

富士経済も乳酸菌関連の市場動向を発表している。「乳酸菌・ビフィズス菌を配合した食品や飲料の市場動向」によると、2018年の乳酸菌・ビフィズス菌含有食品市場は、前年比1.8%増の7,930億円だといい、8,000億に迫る規模に成長している。
内訳では、乳清飲料が3,818億円で前年比101.5%、ドリンクヨーグルトでは1,671億円(同102.7%)と拡大しているものの伸びは緩やかだ。反面、クッキーや菓子類をはじめとした菓子類は178億円(同107.9%)となり、2019年見込みでは192億円に。
機能性ヨーグルトの伸びが停滞気味になりつつあるなか、今後の伸びは菓子類や一般食品、サプリメントに期待がかかっている。

気になるのは、乳酸菌の機能性イメージを一気に押し上げたといえる「機能性ヨーグルト」の売上。
昨年辺りまでの異常な乳酸菌ブームの過熱ぶりは落ち着きつつあり、成長率はやや緩やかに。
「ヨーグルトの消費量としてはこのあたりが限界」と見る向きもあり、今後の市場拡大についてはサプリメントや飲料、一般食品といったカテゴリーへの期待がやはり大きい。
ここ数年の大手食品メーカーによる相次ぐ乳酸菌市場への参入は、こうした潜在市場の掘り起こしが狙いといえそうだ。

なかでも各社共通しているのが「免疫」にフォーカスしている点。
各菌株の研究やプロモーションが活発化している。乳酸菌市場での競争が激化するなかで、ポイントになるのは“菌の特長をいかに差別化できるか”。バラエティ豊かな乳酸菌素材が数多く上市されるなかで、それぞれの菌株が持つ優位性やエビデンスが注目されている。

機能性表示食品190品へ「目の疲労」「睡眠」「胃」など新テーマも登場

乳酸菌やビフィズス菌を機能性関与成分とした機能性表示食品は190品に(2020年2月4日時点)。「
腸内環境改善」や「便通改善」などの整腸作用領域を中心に、「体脂肪低減」、「内臓脂肪低減」、「BMI改善」など抗肥満・抗メタボ領域で数を伸ばしている。また、新たな領域では、「肌の潤い維持」、「目、鼻の不快感軽減」、「ストレスの軽減」、「食後の胃の負担を和らげる」といった表示も登場している。

注目はヤクルト本社。同社初の機能性表示食品『Y a k u l t(ヤクルト)1000』(届出番号:D279)は、L.カゼイYIT9029を1本100mL中に1,000億個と高密度で配合した。“ヤクルト史上最高密度の乳酸菌・シロタ株”と銘打ち、表示内容についても「ストレスをやわらげ、睡眠の質を高める、さらに腸内環境を改善する(抜粋)」とトリプルクレームとなっており、従来品との差別化を図る。
また、ビフィズス菌を配合した乳製品乳酸菌飲料『BF-1』(届出番号:D589)は、国内初となる“食後の胃の負担をやわらげる”機能を表示。腸へのアプローチが多いなか、胃をターゲットにした商品の登場で、高い関心が寄せられている。

キリンの『イミューズアイKW(ケーダブリュ)乳酸菌』は、「目の疲労感を軽減する」と表示しており、整腸作用に留まらない新たな機能性が発信されている。
一方で、同じ菌株でも複数の訴求が可能な素材も。亀田製菓が手がける『植物性乳酸菌K-1』関与成分とした届出品では、「肌の潤いを維持する」に加え、このほど「お通じを改善する」整腸領域でも受理。ニーズに応じた使い分けが可能だ。

先月末には、殺菌乳酸菌市場をけん引してきたコンビの『EC-12』が整腸作用で初受理するなど、機能性表示対応菌の増加は止まらない。
レッドオーシャン化しつつある乳酸菌市場において、機能性表示食品への対応は一つの重要な要素になってきており、今後も受理品から目が離せない。

機能性表示食品 訴求別 受理品数(消費者庁発表データより 2月4日時点)

引用:「健康産業新聞 1686号」より