NO.72 増えている抗うつ薬服用者。本当に安全なのか…
うつ病患者は、毎年増加しているといわれています。
平成26年に医療機関を受療したうつ病・躁うつ病の総患者数は112万人です。
平成30年現在は、もっと増加している可能性があります。
現代社会は悩みも多く、自分が望むような道を進めないことも増えているのかもしれません。
そんな時には、気分が落ち込んだり、眠れない、疲れが取れない、食欲かない、意欲に欠ける…など、前向きになれない症状が表れてきます。
ちょっとした落ち込みなら、気分転換でまた復活できるかもしれませんが、長期に症状が続くと、どこか悪いのではないかと受診してしまう人もおられます。
SSRIの発売でうつ病の患者が急増
1999年にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)といわれる新しい働きの抗うつ薬が発売され、よく処方されるようになっています。
うつ病では脳内のセロトニンなどの量が少なくなっていると考えられています。脳内に出されたセロトニンは細胞内へ回収されますが、SSRIはその回収(取り込み)を阻害することで脳内のセロトニン量を増やします。この働きによってうつ病を改善する薬です。
この薬が販売されるようになって、患者は急増しています。
8割の患者さんには効果がないのではともいわれていますし、初めは効果があってもすぐに効果を感じなくなり、薬が増加していることも懸念されています。
抗うつ薬の影響で起きたと思われる二つの事件
最近のYahoo!ニュースに、「抗うつ薬」の影響で体中に刺青を入れ、包丁を持ち出した主婦の悔恨が掲載されていました。
ある主婦が、ストレスと過労により、一時的な不眠とうつ状態に陥ったそうです。クリニックでは薬が処方されるだけで、根本的な生活環境の改善に踏み込むことはなく、初めは効いていた薬もすぐに効かなくなり、量はどんどん増えて行ったといいます。
温厚だった女性は、服装も派手になり刺青を入れ、万引きを繰り返し、どんどん荒れて自宅で包丁を握り締め、子どものいる前で「私を刺せ!」と叫んだということです。
抗うつ薬などを服用し、重大事件の犯人になったケースは少なくないようで、全日空61便ハイジャック事件(1999年7月23日発生)では、機長を刺殺した当時28歳の犯人は1年以上前から抗うつ薬を処方され、服用していたとか。
この事件では、抗うつ薬の影響が認められ、死刑ではなく無期懲役の判決が確定しました。
SSRIなどの抗うつ薬の副作用やリスクをきちんと説明する医師は少なく、患者さんも、処方された薬だからと安易に飲んでしまっている人も多いと思います。飲み始めに効果があれば、効果が感じられなくなるとまたそれに依存してしまう。そしてどんどん量や種類が増えるといった悪循環に陥ってしまいます。
その主婦は、抗うつ薬の量を少しずつ減らし、薬を止めるための入院治療をし、平穏な生活を取り戻したそうです。
薬の影響で、常にイライラして自分が自分じゃなかったようだったと話されています。
SSRIなどの抗うつ薬は、突然中止すると逆に症状が悪化する可能性もあります。さまざまな症状が表れる恐れがあるため、時間をかけて減薬することが重要になります。
薬に頼らず、は嫌な環境を変える勇気が必要
生きていれば、いろいろな出来事に遭遇します。自分が望んでいないことに出くわすことも多々あります。
ですが、そんなことは皆が経験していることで、まずは嫌な環境を変えてみることが必要です。
仕事を止める、人間関係を切る、楽しいことを見つけるなど、今の状況を変える勇気が必要です。
今の状態に留まることは、苦しくても楽な道なのです。それでは何の解決もできずに、結局、強制的に感情をコントロールしてくれる薬に頼ってしまうことになります。
薬には必ず副作用が伴います。生活環境などを変えながら一時的に使用することはあっても、それに頼ることはどんな病気でも問題があります。
薬には必ず副作用が伴います。生活環境などを変えながら一時的に使用することはあっても、それに頼ることはどんな病気でも問題があります。
自分の身体を自分でコントロールできなくなれば、ますますコントロールできない状況に入ってしまいます。自分の身体は自分でしか守ることはできません。
たとえ受診する場合も、リスクをきちんと説明し、いずれはお薬を止めることを考えてくれているドクターを探すことが大切です。
山田有希子(薬剤師・サプリメントアドバイザー・ナキュア代表)
薬科大学卒業後、薬剤師や美容アドバイザーなどを経て2001年
サプリメントショップを開業。個人顧客からメーカー企業まで幅広く事業を展開。
日本ニュートリション協会会員。