NO.58 マグネシウム不足と鬱

薬のイメージ

鬱の人口は年々増加しています。病気ではなくてもイライラしたり、気分が優れない人が増えているように感じます。

ストレスを抱えることが多い現代社会ですが、これほどまでに多くなってきている鬱の原因は一体、何でしょうか?

抗鬱剤に頼り過ぎると、抜け出せなくなる

気分が落ち込んだり、憂鬱な気分になることは誰にでも起こります。ですが、別のことに集中することで気分が変わったり、時間が経って回復することで、また元の精神状態に戻ります。

ところが、なかなか元に戻らないために、日常生活を送ることが困難になることが、いわゆる鬱病と呼ばれます。最近では、病院ですぐに抗鬱剤を処方してくれるので、安易に薬に頼ろうとする人も増えています。薬には必ず副作用が伴います。特に抗鬱剤は、長く服用すると抜け出せない人が多いようで、薬に頼る前に改善することを考えたいですよね。

マグネシウム不足が引き起こす疾患とは?

「マグネシウム」という名前を聞かれたことがあると思います。豆腐を作る時のにがりは、塩化マグネシウムが主成分です。
生体内において300種以上の酵素の補酵素として働いており、健康な成人では約21~28gが全身に含まれています。カルシウムとともに骨に関係する重要なミネラルでもあり、タンパク質の合成、筋肉の収縮、血圧の調整、体温の調整、エネルギー代謝など、多方面で健康な体を維持するために関わっています。

不足すると、心疾患や、筋肉の痙攣、骨粗しょう症、不整脈、神経・精神疾患などを起こします。

認知症

脳のシナプス(神経活動に関わる接合部位)の柔軟性が低下して、物忘れが激しくなります。
マグネシウムは、このシナプスの柔軟性を高め、記憶の正常化を維持します。

心疾患

マグネシウムには、心臓血管の筋肉痙攣を防ぐ作用、動脈内の血栓を防ぐ作用があります。

骨粗しょう症

体内のマグネシウムが不足すると骨の中のマグネシウムを溶かして補うようになります。この時同時にカルシウムも骨から溶け出すので、マグネシウムが不足すると骨粗鬆症になりやすくなります。カルシウムとマグネシウムのバランスは2:1が理想で、カルシウムばかり摂取していてもダメなのです。

不整脈

マグネシウム不足により、心臓の筋肉が正常にポンプ機能を果たせなくなるために起こります。

神経・精神疾患

神経伝達物質であるセロトニンには、気分を安定させる働きがあります。マグネシウムはセロトニンの生成に関わるために、不足すると気分が落ち込みやすく、憂鬱になりやすいのです。

低血糖はイライラ、気分の落ち込み、もの忘れ、不眠症、不安状態が続くなどを起こし、鬱病のような症状に陥るといわれています。この低血糖は、マグネシウム不足が原因でも起こります。

精製された穀物、インスタント食品、加工食品、白糖の多いお菓子類、食品添加物などを多く摂取することで、体からマグネシウムを激減させます。また長期で服用する医薬品などもマグネシウムを排泄させてしまう原因になります。マウスの実験においても、マグネシウムの低下が精神障害の成因に関わっていると考えられています。

特に脳はマグネシウムの消費量が多いので、不足すると疲れやボーっと感じるだけでなく、頭痛を感じる場合もあります。片頭痛発作中には、脳内のマグネシウムは約20%減少しているという報告もあるそうです。
マグネシウムの低下は、神経細胞が弱くなってしまうと考えられ、伝達反応が低下したり、神経のバランスを取ることが困難になります。

「わかめと豆腐のお味噌汁」はマグネシウム摂取に最適

マグネシウムが多く含まれる食材は、海藻類、大豆類、ごま、ナッツ類、全粒穀物などです。昔ながらの、わかめと豆腐のお味噌汁は、マグネシウム摂取には非常に良い食べ物だということがわかります。

日本人の生活では、食生活の欧米化によって、マグネシウムの摂取不足が慢性化しています。糖尿病などの生活習慣病には、マグネシウム不足が関与していると考えられています。
その他マグネシウムには、血圧を下げる効果、アンチエイジング、便秘など、健康を維持するいろいろな働きがあります。

鬱病ではないにしても、ストレスが多く、イライラしやすい、気分が落ち込みやすいと感じる人は、積極的にマグネシウムを含む食材の摂取をおすすめします。

山田有希子(薬剤師・サプリメントアドバイザー・ナキュア代表)
薬科大学卒業後、薬剤師や美容アドバイザーなどを経て2001年
サプリメントショップを開業。個人顧客からメーカー企業まで幅広く事業を展開。
日本ニュートリション協会会員。