【実例から学ぶ摂取アドバイス】
日本ニュートリション協会では、健康分野の著名人の講演会や会員様同士の情報交換の場としての交流会など、アドバイススキル向上には欠かせない機会を提供しています。 JNF会員の方は無料でご参加いただける毎年恒例の勉強会です。
2008年2月29日金曜日「サプリメントアドバイザー交流会2008」が開催されました。
会場は毎年恒例の「健康博覧会2008」が開催されている東京ビックサイト。
「健康博覧会」は、サプリメントを始め健康関連の企業が参加するアジア最大の業界イベントです。
全国から健康関連の企業や個人が来場、新しい製品やサービス、原料、食材などが発表される業界屈指の催し物です。
日本ニュートリション協会主催の交流会は13時開場、13時30分開始です。2月とは思えぬ穏やかな晴天のもと、参加される会員の方々があつまりました。殆どの方が健康に関する事業に何かしら関わりのある方々で、毎年参加される方同士和やかな会話があちこちで聞かれました。会場はほぼ満員。参加された方々は約60名でした。 事務局から7回目を迎える「サプリメントアドバイザー交流会2008」についての経緯や、新設された「実務者コース」の説明のあと、理事長一楽智也から参加のお礼と協会の活動報告をさせていただきました。
(理事長の挨拶)
協会の立上げが2000年、30年前になりますが、私は子供のころアメリカで生活していました。そのころ既に一般の客がドラックストアやモールのショップでサプリメントを大きな箱で気軽に買って、摂取していました。たまたま隣の人が「癌」に罹っておられて、サプリメントを使った栄養療法で治療していたことなどがありました。その後日本に戻って我が国の現状に直面して、しっかりした知識を持ってサプリメントを摂取する文化がないことを知りました。
当時アメリカにある「国際スポーツニュートリション協会」という団体がありました。この団体はアスリートやYMCAの子供たちに健康を教えたりUCLAで教えたりなど、健康や栄養の指導をしていました。そんな活動に感銘しまして、1994年「国際スポーツニュートリション協会の日本支部」を設立いたしました。その時点では日本のスポーツアスリートを対象に栄養やサプリメントの普及を目的に活動していましたが、その後2000年に当協会を設立いたしました。他にも同様な団体はありますが、実践的にサプリメントの摂取を啓蒙する団体はありませんでした。健康文化の進んだアメリカの栄養学を基本にサプリメントの効用を伝えたいと言う思いでこの協会の活動を展開してきました。売る人も買う人も、良いものを見極めることのできる社会を目指して今後も活動していきます。お蔭様で会員の方は3,000人を超えていらっしゃいまして皆さん各方面で活躍されています。健康関係の方が多くいらっしゃいますが、お医者さんや看護師さんも結構いらっしゃいます。その他一般の方やスポーツアスリートの方もいらっしゃいます。その方たちの論文を読んでいると、日本にもこれだけ健康やサプリメントの事を考えているひとがいるんだな、と感激します。否定的な側面や薬事法の厳しい縛りはありますが、マーケットは確実に拡大しています。アメリカではある程度の効果効能は話せるようになってきています。日本もこの4月から特定健診などの制度が始まり、状況も変わってきますので、益々皆さんが活躍する場が拡大すると思っております。私も雑誌(ゴーギャン男性誌、看護師の業界誌等)に連載させていただいたり、薬剤師協会でお話をさせていただいたり、お医者さんの集まりなどでもお話しますし、エステ業界などでもお話をさせていただいています。 今後日本ニュートリション協会では、サプリメントアドバイザーを教育できる「スーパーサプリメントアドバイザー」とでもいいますか、そういった人材を育成していきたいと思います。
次に、基調講演です。今回講演をお願いしました山田有希子先生は、薬科大学を卒業後、薬剤師や美容アドバイザーなどを経て2001年サプリメントショップを開業、現在まで個人の顧客からメーカー企業まで幅広く事業展開されています。勿論日本ニュートリション協会の会員でもいらっしゃいます。
(山田有希子先生のお話)
始めまして、山田有希子です。ウチのショップはスタッフが全員薬剤師でサプリメントしか扱っていないお店です。開業して7年になりますが、お客様もサプリメントに対する意識とか健康状態も、確実に変わってきています。その中でお客様に対するカウンセリングの重要性が益々高まってきている、と言うのが私の実感です。その前に薬剤師である私が何でサプリメントショップを経営しているのか、少しお話したいと思います。 私は大学卒業後、管理薬剤師として製薬メーカーに勤めました。その後美容業界に入りました。化粧品の販売をされる方のインストラクターをやりました。私にとってはお客様を綺麗にしてあげることが楽しくて向いている仕事でした。その後出産を機会に近所の医科学関連の企画会社で企画をしていました。 更にその後、薬局(ドラックストア)で薬剤師として働きました。常々独立して健康や美容の仕事をしたいとの思いから、現在のショップ、ナキュアを設立いたしました。
独立するきっかけは、それまでは皆、薬局に行く時は「体調が悪いのだけど、どんな薬がいいのか?」と聞いて買うのが普通だったのに、そのドラッグストアでは薬剤師はレジを打つ人でして、お客様は売り場のポップを見て薬を買うという状況でした。ちょうど当時サプリメントが出始めのころでした。 私がレジにおりますと、毎週胃腸薬の大瓶を買われる方がいらっしゃいました。毎週毎週でしたので、よほど大人数の家族がいらっしゃるのかなと思っていました。ある日レジのところで、お話する機会がありまして、「ご家族の皆さん揃って胃腸が悪いんですか?」と聞いたところ「自分で飲んでいる」とおっしゃいました。何で飲んでいるか聞いてみると、食事をした後薬を飲まないと消化しないように感じで胃腸薬を飲んでいる、とのことでした。
長いこと続けているので、飲まないといられないようでした。やはりサプリメントではないので、副作用があります。食事や運動の指導をして、その方は正しい食生活に気付かれたのですが、薬剤師のアドバイス無しに買っていくお客様がすごく多いのです。鎮痛剤なども10箱まとめて買っていかれる方など、薬物中毒的な方が多くいらっしゃいました。 ある日一見して「アトピー症状」と分かる方が、塗り薬を探していらっしゃいました。私は「塗り薬もいいけど、お医者さんに行かれてますか?」とお聞きしたところ、「行ってない」と答えられたので、「どうしているか」とお聞きしたところ「かなり高いサプリメントを飲んでいる、医者に行ったら治らないと言われている」「ただ症状が悪化して、会社に行けなくなるので塗り薬を買いに来た」とのこと、この二つの事例からサプリメントと薬の境目があやふやだし、サプリメントはそんなにいい加減に販売されているのかと疑問を持ちました。薬とサプリメントの架け橋になって、正しい摂取方法をアドバイスする人がいないのではないかと思い、友人を誘ってサプリメントショップを始めました。店では販売の際、必ずカウンセリングをしないと販売しないシステムを取っています。
サプリメントとはそれだけで効果があるものではないんです。サプリメントは健康になるための一つの方法ですから、サプリメントの摂取と同時に気になる症状を改善する食事や運動を考えた生活を計画的に行うことで症状の改善が図れます。ショップのお客様は30代から40代の女性がコアです。ちょうどこの年代の女性が年代的に体調が変わる時期を迎えているといえます。目標はダイエットや美容です。最近はストレスの改善や食生活の改善などを希望される方も多くいらっしゃいます。7年前にオープンした時は「サプリメント、何それ」という時代でしたが、現在は来店されるお客様の80%は何らかのサプリメントを摂取したことがあると答えるまでになりました。相談の内容は自分に一番あっているサプリメントは何か、ドラッグストアとかマスコミではいろいろ情報があるが、本当にそれでいいのかゆっくり相談したい、お医者様は忙しいので、ゆっくり相談できない。そして安心、納得してサプリメントを摂取したい。といった状況です。
サプリメントに対する理解はいまや殆どの人が認知するようになりました。市場は2006年TV番組「あるある大辞典」などの影響で、初めて前年を下回りました。2007年も少し厳しい状況です。特にアガリクスなどが殆ど市場から姿を消しました。更に今年は特定健診制度がスタート、「メタボリックシンドローム」関連の商品(コレステロール、高脂血症など)も増えて健康に対する市場の認識がはっきり変わってきています。ですので、去年までの減少傾向は歯止めがかかると思います。また団塊の世代が現役を退きますが、まだまだ若い世代ですので、健康に対する関心が高く、マーケットを刺激すると考えられています。今では殆どの方がサプリメントを知っていますし80%以上の方が何らかの機会にサプリメントを使用したことがある、という調査結果が発表されています。使用頻度では飲まれている方は毎日飲んでいらっしゃいますし、何らかの変化を認めています。選ぶ際の基準はまず品質、次に価格です。 それではサプリメントショップでよくある顧客の質問とその対応の仕方を例をあげて検証してみます。
検証1、風邪を引いているので継続しているサプリメントの摂取を止めました
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
風邪薬は対処療法なので、風邪の根本を治すには体力をつけてもらうことが一番なので、ビタミンやミネラルなど基本的なサプリメントは体力が低下している時こそ摂取していただく、中断せずに継続して摂取していただく。が正解です。
検証2、食事に掛ける金が無い、サプリメントで代用できないか
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
サプリメントを宇宙食のように、それだけ食べていれば栄養を補給できると勘違いしている方がいらっしゃいます。やはり基本は食事です。基本の食事ができていて初めて実力を発揮するのがサプリメントです。サプリメントだけに頼るのは間違いです。
検証3、サプリメントを摂取すると(栄養が有りすぎて)太らないですか
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
サプリメントを宇宙食のように、それだけ食べていれば栄養を補給できると勘違いしている方がいらっしゃいます。やはり基本は食事です。基本の食事ができていて初めて実力を発揮するのがサプリメントです。サプリメントだけに頼るのは間違いです。
検証4、肌に良いと言われているサプリメントを飲んでいるが、ぜんぜん効かないけど、どうしたらいいですか
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
お肌に良いサプリメント、たとえばコラーゲンとかヒアルロン酸とか飲んでいても変化を実感できない方は、ベースの栄養が足りていないと言うことが言えます。まずしっかり食事を取っていただくことをすすめますが、ビタミン・ミネラルなどの基本となるサプリメントをとっていただいて、細胞に力を与えていただくことも大切です。
検証5、いつサプリメントを飲んだら(摂取したら)いいですか
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
ビタミン・ミネラルなどは食事による摂取でも足りない栄養素なので、食事を取った後に飲む方が、食事をしていない時に飲む時よりよいでしょう。ハーブなどは漢方と同様に食前に飲む方がいい場合もありますが胃が悪い方などは食後でもいいですし、眠りに関係するサプリメントなどは寝る前が良い場合もあります。
検証6、サプリメントを飲み始めて、湿疹などが出ましたが、「好転反応だから飲み続けた方がいいよ」と言われました。何とアドバイスしたらいいですか
このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
サプリメントは栄養素を固めたものなので合わない人もいますので、何が原因か分からない、そこで先ず止めていただくほうがいいと思います。原因が別にあれば止めても治りませんし、治ればサプリメントが原因と考えられます。相談に来られるお客さんの中にも、「好転反応だから飲み続けなさい」と言われた方が多くいらっしゃいますが、あまり強いて言うと結果、不信感を助長します。どうしても飲みたいと言われるお客様には、量を減らして飲んでもらい、様子を見ながら徐々に増やしていく方法もあります。それでも湿疹などが治らない場合はそのサプリメントを止めていただくのがベストです。
検証7、今までダイエットを目的にサプリメントを飲んだが効果が無い、何を飲んだらいいですか?
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
サプリメントは飲んだからと言って結果が直ぐ出るものではないですね。逆に運動と食事だけでは毎日はキツイところがありますが、そんな時サプリメントはバックアップしてくれる、背中を押してくれるものです。よく広告にあるように「何もせずに一週間で5キロやせる」などは、単に体を壊しているようなもので、そんなことはありえない、とアドバイスすべきです。まず、運動や食生活など毎日の生活を変えなければ結果は得られないといってもいいと思います。
検証8、痩せたいので毎日食事をせずにサプリメントだけ摂取しています
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
人は食事をしないと、どんどん代謝が落ちていきます。日本人は特に飢餓にたいして強い民族なんです。栄養を蓄える能力にて長けている民族なんだそうです。食事をとらないと、体は少ない食事からでもどんどん栄養を蓄えようとします。これがリバウンドです。食事をしないダイエットはリバウンドし易い体質になってしまいます。ましてや食事をしないと筋肉やカルシウムが減少してしまいます。痩せたいならカロリーを落とす、油などを控えて、お腹が減る状態を無くすことです。
検証9、どれくらい飲んだら効果があるか
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
薬は飲んで直ぐ効果が現れますが、サプリメントはティッシュを重ねていくように徐々に結果があらわれてくるものです。やはり続けて摂取しないと変化は現れません。薬のように副作用があまり無いだけに続けないと変化は現れないのです。
検証10、いつまで続けて飲めばいいのでしょうか
(このお客様の想定質問に対する参加者のアドバイスを開場のマイクからお聞きして、正解を解説)
サプリメントは薬ではありませんので、体調が悪くなることは通常ありません。ただサプリメントを摂取する前と同じ生活をしていますと、体調はもとに戻ってしまいます。
以上、一般の方はサプリメントの事を良く分かっていないと言えます。でも納得して摂取したいと誰しも考えています。我々はお客さんの事をどれだけ理解してあげるか、が大切だと思います。まず何に悩まれているか聞く、聞いた内容を確認する。痩せたいと言ったら「痩せたいんですね?」と確認しながらお話する。更に信頼関係を構築する。「この人なら何でも相談できる」と言う人間関係ができることが重要です。カウンセリングとは雑学王でなくてはできない、と思います。それはサプリメントのことだけはなくて健康全般にわたったものです。改善するためには、生活を変えていかなくてはなりません。一気にいくつも生活を変えていくのは非常に難しいのです。逆に一つでも変えることができれば、「できるかもしれない」といった可能性を感じてもらうことが大切です。カウンセリングの重要性は、健康はサプリメントだけでは改善されないですから、サプリメント以外の話もアドバイスできるようになってほしい。これは特別な勉強は必要ありません。新聞の健康欄やTVの健康番組などを参考にするなど、常にアンテナを張っていれば情報は手に入ります。また相手に不快を与えない服装や、しっかり聞く態度、相手と一緒になって改善の方法を考えるなど、相手から信頼されることに努めましょう。
この他、代表的な顧客の実例(データ、写真などを上げて)から、顧客とのコミュニケーション次第で目を見張るほどの成果が得られたことなどを経過に沿って解説、最後に質疑応答に入る。
(質疑応答)
(質問)
上記で紹介した顧客の方は既に2年たっていますが、今でもサプリメントを摂取していらっしゃいますか?
(応答)
作用を実感されているので、今も摂取されています。
(質問)
最近当社でCQ10とかロイヤルゼリーが入っているサプリメントを販売しているのですが、「疲れが取れない」とおっしゃるお客様にはどんなアドバイスがいいのでしょう?
(応答)
この手のサプリメントは体感しやすいので、人気なのですが、実感が無い場合は何かの危険信号である可能性があります。もっと基本的なサプリメントが足りていない可能性があります。ストレスが強かったりすると、栄養を充分に吸収することがでません。また、添加物の多い食事をしていますと、その分解に肝臓がフル回転して疲れが取れない場合があります。ビタミン・ミネラルなどの基本サプリメントを併用することをお勧めしてください。
(質問)
アルバイトのスタッフが多く、アドバイスに必要な傾聴法などを教えているのですが、何か教えるコツのようなものがありましたら、お聞かせください。
(応答)
テクニックがなくても、お客様のことを知ろうとする気持ちが大切です。知識が無くお客様の質問に答えられなくても、いい加減な事を言わないで、「後で調べてご連絡させてください」と言えばいいです。大切なのは、お客様のことを知ろうとする気持ちがあるか無いかです。
(質問)
世の中にあふれているサプリメントを選ぶ時の基準があればお願いします。
(応答)
原料や製造工程などを知る勉強をする。そのための情報収集はしっかり行います。薬剤師ならではの選び方はありません。ちゃんとしたメーカーは、聞けば教えてくれます。
この後、山田先生や理事長を囲んでフリーに楽しく懇親会を過ごし、解散となりました。事務局からは、来年もこの時期、「健康博覧会」に合わせて交流会を実施することをお伝えして、「サプリメントアドバイザー交流会2008」は無事お開きとなりました。