“ドライアイ症候群”と必須脂肪酸摂取の関係

アメリカ国内では女性を中心に患者数が800万人を上回るといわれる「ドライアイ症候群」であるが、米国の専門機関が行った研究によると、どうやらこの現代病は我々が摂取する必須脂肪酸の種類と量に原因と予防法が隠されているようだ。

「ドライアイ症候群」は、瞳に潤いを与えて視覚機能を潤滑に行う役割を担う「涙」の量と質の低下による目の痛みや刺激、不快感を伴う症状の総称である。放置しておくと角膜の損傷や腫瘍化に発展して、視覚を失う危険性もあるという。その原因などについてはこれまで不明であったが、この度3万7千人以上の女性の研究データによって、調理用油やサラダ油、哺乳動物の肉に多く含まれるオメガ-6-脂肪酸①の摂取量が多い女性は「ドライアイ症候群」の発症度が高いことが明らかになり、逆に魚肉や胡桃に多く含まれるオメガ-3-脂肪酸②の摂取量が多い女性では同脂肪酸による予防効果が確認された。具体的な数値としては、以下のような報告がされている。

*オメガ-6-脂肪酸摂取量/オメガ-3-脂肪酸摂取量が15③を上回ると、発症の危険度は2.5倍になった。因みに、15は今日のアメリカに於ける平均的な数値である。

*マグロを週に5度以上食事で摂取していた女性は、1度しか摂取していない女性と比較すると、発症の危険度が68%も軽減された。

尚、同じ魚肉でもオメガ-3-脂肪酸を少量しか含まない種類のものでは予防効果は得られなかったと、関係者は述べている。


Fatty Acid Intake Linked to Dry Eye Syndrome

Today, more than 8 million American people, mainly women, suffer from dry eye syndrome. According to researchers from BWH and SERI, the type and amount of essential fatty acids in the diet may play a key role in the cause and prevention of the eye disease.

Dry eye syndrome is a generic term of symptoms such as pain, irritation, dryness, and/or a sandy or gritty sensation due to a decline in the quality or quantity of tears that normally bathe the eye to keep it moist and functioning well. It may lead to scarring or ulceration of the cornea, and even loss of vision if untreated. However, before these findings, the causes and prevention of the disease had not been clarified by the specialists or clinicians. This time, the study with the data of more than 37,000 women proved that a high intake of omega 6 fatty acids, found in many cooking and salad oils and animal meats, may increase the risk of dry eye syndrome. Also a high intake of omega 3 fatty acids, found in fish and walnuts, is associated with a protective effect of the disease. The specific numbers of the data in the study are as follows;

The researchers added that there was no effect in other fish types that have lower levels of omega 3 to protect against dry eye syndrome.

REFERENCES
Biljana Miljanovi, and others. (2005, Oct). Relation between dietary n–3 and n–6 fatty acids and clinically diagnosed dry eye syndrome in women. The American Journal of Clinical Nutrition, Retrieved Nov 29, 2005, from http://www.ajcn.org/

伊藤正男・井村裕夫・高久史麿 『医学書院 医学大辞典』 東京:医学書院,2003年


① 「ω6脂肪酸」とも表示される。メチル基末端(ω炭素原子)に最も近い二重結合が、メチル基末端から数えて6番目の炭素に位置するω6系列の不飽和脂肪酸の総称。リノール酸、アラキドン酸などが含まれる。ω9脂肪酸とは異なり動物脂肪では合成されず、ω3脂肪酸と共に食餌として摂取しなければならない必須脂肪酸であるが、現在その過剰摂取が健康上問題視されている。

② 「ω3脂肪酸」とも表示される。メチル基側の3炭素原子から二重結合が現れる脂肪酸の一種。コレステロールとトリグリセリドの値を低下させるという報告がこれまでにされている。エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α-リノレン酸(C-18)などがある。特に魚肉や海獣肉に多く含まれるEPAは、グリーンランドイヌイットの疫学調査により虚血性心疾患や脳血管障害を予防することが証明されており、現在EPA製剤として日本に於いても広く使用されている。

③ 日本での適正値は4とされている。